旧東海道の古い町並みが残る、名古屋市緑区の有松地区一帯でこのほど「有松絞りまつり」が開催され、伝統的工芸品でもある絞り製品などがお手ごろ価格で販売されたり、絞り実演コーナーも用意されるなど、多くの観光客が楽しみながら絞り製品の身近さを感じていた。
国の伝統的工芸品にも指定されている有松絞り
有松絞りとは、同区の有松・鳴海地域を中心に生産される絞り染めのことで、国内の絞り製品の大半を生産しており、国の伝統的工芸品にも指定されている。この祭りは1984年から始まり、今回で31回目。絞り体験教室や絞りの実演、絞りの秀作を展示する「絞りストリート」の出現、史跡を巡る町並みツアーなどが行われ、2日間で推定9万人が訪れた。
この祭りでは、絞り製品が安く売り出されること。江戸時代から続く商家の軒先などでは連子格子の戸を取り外し、絞りの反物や手ぬぐいなどを積み重ね、威勢よく販売していた。
高校生の長女を連れて訪れていた名古屋市千種区の主婦は「絞りの浴衣を娘にあつらえようと見に来ました。市価よりお値打ちに仕立てられると聞き、たくさんの反物を見ていたら自分の分も欲しくなりました」と笑い、長女も「夏まつりが楽しみになりました。絞りがどんなものか知らなかったのですが可愛いものが見つかったので嬉しい」と話した。
また、有松・鳴海絞り会館に所属する伝統工芸士らによる絞りの実演や、絞り教室の指導をする体験教室も行われ、いずれも盛況だった。
名鉄有松駅に設けられた絞り実演コーナーでは、糸を布に括りつけたり縫い付けたりと絶え間なく手を動かしながら、見学者からの質問に気さくに答えるベテラン工芸士の姿が見られた。見学者は細かい作業をする手元を熱心に見入っていた。
有松絞りの始まりはみやげの手ぬぐい!?
東海道沿いに位置する有松町は江戸時代、交通の要であったにもかかわらず荒地だった。そのため、整備が進められて人の住める町になったのだが、耕作に向かない土地であったことなどから染物産業を生業とする人が増え、東海道を旅する人へのみやげとして絞りの手ぬぐいが売られるようになったのが有松絞りのはじまりといわれる。
宿場町であった隣の鳴海町でも絞りの生産と販売が行われるようになり、江戸での知名度の高かった鳴海にちなみ、「鳴海絞り」とも言われるようになったが、現在では総称した「有松・鳴海絞り」として国の伝統的工芸品に認定されている。
江戸時代にはじまり、約400年の歴史がある有松・鳴海絞りには、100種類ほどの技法が生まれ、中には継承が途絶えてしまい消滅した技法も多くあるという。そのうちの31種類の絞り技法のテキスタイルをのれんのように展示した「絞り回廊」では、古い町家と絞りの織りなす風景を観光客らは盛んに写真を撮っていた。
伝統の絞り製品が身近に 名古屋で「有松絞りまつり」 | THE PAGE 愛知
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