<天職ですか> 人形劇団の演出担当・大野正雄さん
親が子どもを虐待した悲惨なニュースが流れた日。「虐待をこの世からなくしたいという気持ちを裏に込めて、このシーンをやれたらいいと思います」
全国で公演を続ける人形劇団むすび座(名古屋市緑区)の稽古場。演出を担当する大野正雄さんが、穏やかな声で役者に語りかけた。
二〇一一年の初演から、人気作の「ピノキオ」を演出する。ピノキオがコオロギをたたき殺し、父のジェペットじいさんに怒られて号泣する見せ場に、そんな思いを込める。脚本を読み解き、かみくだいて役者に説明する。
むすび座は、役者が黒い服を着て、人形を手で持って演じる。人形には表情がないが、見ている親子には泣いているのか笑っているのかが伝わる。「観客が人形の動きだけを見ることができるから」
滋賀県甲賀市の出身。子どもが好きだったから大学の人形劇サークルに入ったのが、人形劇との出合い。むすび座の劇を初めて見た時、「客席も含めたダイナミックな動きに感動した」。一般企業への就職は全く目に入らず、むすび座一本。両親は人形劇団への就職に反対したが、押し通した。
最初は人形を操る役者だった。「演じる人間の感覚がなかったら、人形にも感覚はない」と先輩団員から諭され、悩んだ。「それまで何の苦労もせず育ち、何にも伝えたいことが湧いてこなかったから」だ。
そのころ、むすび座の指導にきていた中国人に刺激を受け、二十八歳のとき中国へ留学し、京劇を一年間学んだ。社会に伝えたいことや訴えたいことに気付き、演出や脚本の担当を希望。むすび座では最も多い八人で演じるピノキオの演出に抜てきされた。
二年前、自分にも子が生まれ、感じる力を子どもたちから引き出したいと、より強く思うようになった。役者に思いをぶつけ、共感を得て、一緒に芝居をつくる。「子どもたちが将来の社会をつくる。だから、そこに込める思いが大事なんです」
<天職ですか> 人形劇団の演出担当・大野正雄さん:暮らし:中日新聞(CHUNICHI Web)
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2016042502000002.html
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