東海道五十三次の鳴海宿の東、現在でも江戸時代の商家の町並みが残る名古屋市緑区有松では、絞り技術の美が息づいている。
伝統的工芸品の「有松・鳴海絞」は1608(慶長13)年、有松を開村した竹田庄九郎氏が、名古屋城築城で訪れていた大分県豊後の人たちが使用していた手ぬぐいを参考に考案したのが始まりとされる。立体感のある美しい染め柄は、旅人たちの評判から東海道一の名産品となり、尾張藩が藩の特産品として保護した。
400年の歴史を持つ絞り技法は100種類に及ぶが、現在では職人が高齢化し、商品価値のある技法だけが残り、約30種まで減少した。2009年、愛知県絞工業組合は技術の継承・発展、絞り産業に携わる人材を育てるため「絞り後継技術者育成講座」を始めた。現在、約70人が技術の習得に励んでいる。14年に5年間の教育期間を修了した11人も、さらなる技術の向上を目指し、課題を仕事に替えて指導を受け続けている。
「一人一芸」と言われる絞り技術は、一つの技法を繰り返すことで技術が向上する。「いろいろなこと(技法)をすると、手が乱れます」という松岡清子さん(72)は、指先で一定の間隔に筋をとりながら縛っていく「竜巻絞」を得意とする伝統工芸士だ。絞り職人の家に嫁ぐも、義母からはいっさい教えてもらえず、夜な夜な義母が絞った物をほどいて勉強したという。松岡さんは「(育成講座)卒業生からたくさん職人さんが生まれてくれればなあ」と期待していた。
技・伝承:有松・鳴海絞 美しい絞り技術、後世に 育成講座で70人学ぶ /愛知 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160521/ddl/k23/040/240000c