平成25年4月28日 雑句話欄「瞞天過海」

「瞞天過海」は、唐の張士貴が高句麗遠征(麗唐戦争)の際、第二代皇帝・太宗が海を恐れて乗船を拒んだのに一考を案じ、船に土を盛り陸上の屋敷のように仕立てて、天子(皇帝)を欺いて乗船させて海を渡らせたという故事に由来している▼これをなぞらえて「敵に繰り返し行動を見せつけて見慣れさせておき、油断を誘って攻撃する」という冒頭の兵法に至り、三国志にもこの兵法を適用した場面が登場する▼孫権に仕えた太史慈は若い頃、黄巾党の軍に囲まれた孔融を助けて援軍を呼びに行くことになった。しかし黄巾軍の囲みが強く容易に突破できない。そこで、自ら弓を持ち、的を持った数騎の兵とともに城外に出て矢を射る稽古を始め、弓の稽古が終わるとすぐ城内に戻った。初めは警戒した黄巾軍だが太史慈が数日重ねて同じことをするので、やがて疑いを持たなくなった。こうして敵の警戒心が薄れた頃を見計らって、太史慈は城を出て囲みを突破したというくだりがある▼現代でも野球でも「バントをするぞ」と見せかけて投球後にヒッティングに切り替える「バスター」というものがある。大相撲や柔道にしても技かけの駆け引きに垣間見ることができる▼一方で普段見慣れているところに物を隠しても「ここには隠してないだろう」と思わせることで相手を騙す偽装作戦もこの中に含まれるそうだ▼振り込め詐欺などのニュースを耳にしても「自分は大丈夫」と思い込んでいると、犯人の術中に嵌るかもしれない。
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