「表裏を受け入れた上で乗り越える」寿則多辱

寿ければ則ち辱多し

―寿則多辱―

[原文](荘子・天地)
多男子則多懼、富則多事、寿則多辱。是三者、非所以養徳也。
[書き下し文]
男子多ければ則ち懼(おそ)れ多く、富めば則ち事多く、寿(いのちなが)ければ則ち辱多し。是の三者は、徳を養う所以ゆえんに非ざるなり。
[原文の語訳]
男の子が多ければ、その分なにかと心配の種がふえるし、裕福になるとなにかと面倒なことが多くなるし、長生きをするとまた恥を多くかくことになる。だからこの三つのものは徳を養ううえで邪魔になるというのである。
[解釈]
ひとことの部分は「長く生きることは、それだけ恥を晒すことが多くなる。」となり、現代的には「周りに負担をかけるような、寝たきりや不自由な身になってまで長生きしたいとは思わない」と受け取れますが、ここは前後を含めて一文で解釈したほうがよいと考えます。
本来「子宝に恵まれる」「裕福になる」「長生きする」というのは誰でも望むことですが、それを悲観視しているのは、物事には裏表があることを教えてくれるものです。なお、この一文にはさらに続きがあり、この悲観視に対する対処法が述べられています。
ただ、人というのは失敗や恥があって成長するものですし、問題や課題解決も同じで一文にあげられる3つの心配事も適宜、適材適所や分配など解決していくことで、決して人として成長する過程で邪魔になるものではないはずです。
論語に「孔子曰く、君子に三戒(さんかい)有り」(第十六季氏篇)とあり、「老年になると血気はもう衰えるから、戒めは名誉欲にある」とあります。視点を変えれば名誉が欲しいから恥などかけないと考えそうです。
ここでは3つの事例が取り上げられていますが、実生活の中にはどんな状況でも裏表(メリットやデメリット)がありえます。そのことを受け入れて取り組み、乗り越えていきたいものです。
スポーツでいうなら球技に例えられるかもしれません。ボールに触れる時間はほぼ瞬間的なことが多いです。相手に奪われるにしろ味方に渡すにしろ、そのわずかな機会で最高のパフォーマンスを出せれば、その心地よさは何事にも代えがたいはずです。
[参考]
寿則多辱 – 氣楽亭 日乗
寿ければ辱多し 荘子:

[中国古典一日一言]

今日の一言は「中国古典一日一言」守屋洋(著)から、同月同日の一言をもとに自分なりに追記や解釈して掲載しています。

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