「万全を期して」 疑謀は成すなかれ

疑謀は成すなかれ

―疑謀勿成―

[原文](書経 大禹謨)
任賢勿貳、去邪勿疑、疑謀勿成
[書き下し文]
賢に任ずるに貳する勿かれ、邪を去りて疑う勿かれ、疑謀成す勿かれ
[原文の語訳]
賢者を任用しながら、他の雑音に惑ってはいけない。邪悪な人をしりぞけるのにためらってはいけない。邪な人間を捨てる去る場合には、疑うことなく断乎として実行するがよい。はかりごとに、まだいくらかでも疑問があるならば実行してはいけない
[解釈]
少しでも不安点や疑問点がある場合は実行すべきではない。「万全を期す」という意味合いですが、「拙速は巧遅に勝る」と矛盾している面があるのではないかとも。この場合、対象となる事項の重大さに比例させるべきかもしれません。存続のかかる一大プロジェクトなのか、まずは相手より先手を打つべきなのか。
不安が残っていると、ここぞというところで「ほんとうに大丈夫だろうか」と決断を躊躇することがある。ただ、ある程度の見切り発車でも、折に触れて見直しや修正をすることで不安を排除していく方法もあるのではないかと考えます。
万全を期すという点では、10人目のルールというのがあり、もし9人が完全に戦略や計画が正しいと同意する場合であっても、集団思考の落とし穴を避けるために、とにかく(10人目に相当する人が)常に反対意見を出してもらうことで抜け目のない計画を作る知恵として考案されたルールとして活用されています。とすれば、メンバーにひとりネガティブ思考の人をいれておくといいのかもw ただ単なる天邪鬼や臆病者なだけで、決まったことを実行しない人では困りますが。
何かを始めるときでなくても、例えば失敗をした時にトヨタでは「5回のなぜ」で同じ失敗を繰り返さないように原因を追及するというのがあり、通じるものがあるかと。
書経が編纂された頃は戦のある時代だったので、人命を大事にすることを考えれば、万全を期すことは当然のことだったでしょうし、孫子の兵法でも勝てる確証がなければ攻めるではないとあります。
原文として引用した一文は「決めたことに迷うな、ためらうな、その代わり少しでも迷うならやめろ」
客観的視点と先見性からの分析力と危機管理能力、その思考結果に対する自己抑止力と決断力・実行力を説いたもの
昨今の尊い命が奪われた火山噴火に伴って、噴火の可能性がある山に登る時の対策を専門家に訊ねたところ「山に登らないことです」とコメントが返ってきたそうです。至極まっとうな見解だと思います。
[参考]
書經虞書_原文

[中国古典一日一言]

今日の一言は「中国古典一日一言」守屋洋(著)から、同月同日の一言をもとに自分なりに追記や解釈して掲載しています。

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